湯治場余話・その2
秋から初夏にかけては、最後にぬくもるための上がり湯を 沸かしています。これが五右衛門風呂です。
温泉の一日はこの上がり湯を薪で沸かすことから始まります。
パチパチとはぜる音、ほのかに立ちのぼる煙が湯気を誘って、
いかにも昔ながらの風情です。 湧き出した源泉を汲んでそのまま沸かすため、表面には膜が できるほど。
加えて熱の湯と呼ばれる成分のため、それはもう 体の芯から温まること請け合い。
長く源泉に使って、最後はしっかりと上がり湯でぬくもる。
こんな温泉のつかり方も、かなり珍しいものでしょう。
ところでこの五右衛門風呂ですが、全国で唯一のメーカーが 広島県にあるそうです。
広島といえば、ここでは最もお客さまの多い県でもあり、
なるほど、いろいろとお世話になっているのだな、と。
ただ、五右衛門風呂は熱効率が良いので、その分ほどよい
湯加減に沸かすのは、なかなかに難しいものがあります。
熱すぎて大変、ぬるくてブルブル、といったお客さまの苦情が
聞こえてきそうです。
そこは昔のまま、近代化に乗り遅れてしまった故の辛さと。
お許しいただきますよう。
わけても、静かにつかることが出来るのは平日の午前と夕方。
のんびりじっくりつかり、千原温泉の底力を実感してください。